KWNB624

二次小説置き場。ブログタイトルから連想できる方のみどうぞ

だから酒ってやつは①

 

カワノベ/大学生設定

 

居酒屋を出た阿部と川島は肩を組み、酔い醒ましに歩いて帰ることにした。二人で飲むのは初めてではなかったけれど、今日は何だか異様に盛り上がって二人ともいつも以上に酒が進んだ。結果、酩酊状態でふらつきながらもお互いの服をしっかり掴み合い、上機嫌でのろのろと歩いている。

「あー飲んだ飲んだー!」

「公しゃん飲みすぎッスよ」

「あ!タカ今ロレツ回ってなかった~!もっかい言って!もっかい!」

「回ってる!」

「じゃあ言ってみー。ほれほれ公さーんって」

「公しゃ、……」

ぎゃははは!と腹を抱えて笑う川島を阿部は悔しそうに睨むと、突き飛ばすように肩で体当たりした。

「イッテー、あにすんだよ」

「あんたが悪いんでしょ!」

川島はまた大きな声で笑ってから、だーってタカがかわいーからじゃん、と拗ねる阿部の肩を抱き寄せ髪に頬を寄せる。

もう恐らくどこを歩いているのかも分からずに、ただただ目の前に続く道を進んでいるだけだ。それでも楽しくて気分がいい。阿部も普段はここまで酔うこともないが、川島といるとそれだけで嬉しくて楽しくて、気持ちがふわふわする。だから酒も料理も美味しくて、こうしてくっついて歩くのもとても心地良く感じてしまう。

「ターカー」

「もぉー重いっ」

「あー今すぐ寝たい。ベッドで寝たい~タカー」

「公さんち遠いでしょー」

「んーじゃアツシんち行こーぜ!」

いつもの相方がいなくてやはり物足りなかったのだろう、川島の提案に阿部も異存はない。二人は覚束ない足取りで、それでも矢野の住むアパートへと軌道修正した。

「おっ」

何かを見つけて川島が走り出す。元気だなぁと思いながら阿部が目をやった先には、暗い歩道をぺかぺかと白く照らすジュースの自動販売機が鎮座している。

「タカ、お茶買ってやるよ」

「公さん!それおしるこでしょ」

適当にボタンを押す川島の指を両手で包み込んで阻止するも、阿部の努力空しく川島はコーンスープだのココアだの余計なものばかり出して、二人はしばらく自販機の前で笑い転げた。

「落とすなよー」

「公さんも持ってください」

「ヤダねー」

結局大量に買ったドリンクは全て阿部が両腕で抱えるように持たされた。また膨れる阿部を柔らかい目で見つめながら川島は笑い、それから阿部の肩をさっきとは違い、優しくそっと抱き寄せる。公さん?と声に出そうとして開きかけた唇が、はむ、と塞がれた。

どれくらいそうしていただろうか、一旦唇を離した川島がじっと阿部の瞳を見据えて、それから驚いて目を見開く。

「うぉっ!こらタカ、ちゃんと持っとけって」

力の抜けた腕から落ちかけたドリンクの缶を川島はとっさに押さえ、もう一度阿部の腕ごと身体に押しつけた。それから呆然としている阿部の顔を覗き込むようにして、 また唇を近づける。阿部は漸く我に返り一歩後ずさったが、そんな抵抗にもならない間合いはいとも簡単に詰められて、

「…っ公、…さん…」

「ん?」

「…酔ってるでしょ」

「酔ってねーよ?」

そう言って、また阿部の上唇と下唇を交互に食んでは吸ってを繰り返す。

酔ってる、絶対酔ってると言葉にならない心の声で阿部は言い返した。だって、酔っていないとおかしい。こんなふうに口づけてくる川島も、目を閉じて受け入れている自分も。

「タカは酔ってねーの?」

唇を合わせたまま訊かれ、互いの唾液で濡れた柔らかな薄い皮膚が外気の冷たさと吐息の熱さを同時に感じる。蒸れた感覚に頭がぼうっとした。

「……酔、…ってる…?」

「んー、…じゃあ俺も、酔ってる」

そのままぎゅっと強く抱きしめられる。もうすぐ、あの角を曲がれば矢野のアパートが見えるというところで、阿部と川島は互いの舌を何度も何度も絡め合った。